息子について

手首が腫れるまでピアノを練習する。連符が苦手なようだ。来年はコンクールに出たいらしい。やめたほうが良い。芸術が芸術でなくなるきっかけになりかねない。

宿題をほどほどにサボる。マスを一個飛ばしたり模範解答を写したり。指摘したことはない。

足が遅い。気にしている。靴屋で時間をかけて靴を選んでいる。靴に非はない。いつか自分の至らなさを人のせいにするような大人に成長するぞ。

学校の話を全くしない。いじめられているわけではないようだが。学校から預かった書類も出さない。これだけは勘弁してほしい。この前集金日がわからなかった。来週運動会があることもたまたま買い物で会った同級生の母親から聞いた。

この世界のことを何もわかってない。恐ろしいほどに、わかっていない。人生の意味、なんのために生まれてきたのか、いまの生活がどう成り立っているのか。この国が何処へ向かっているか。いま君が好きなあの娘の将来。挫折、絶望、諦め。終末。

はやくしろ

最近出会った不愉快な人間を紹介します。

・タバコ臭い人

→臭い。一呼吸するたびに鼻の奥に、肺臓の底にヤニが絡みついてくる感覚があって吐きそうになる。頭が痛くなる。近寄らないでほしい。

・深夜に電話してくる人

→迷惑。どうせしょうもない愚痴とかなんらかの救済を求めてくるのみ。恋人ならまだしも。つまらない話はツイッターや日記帳にでも昇華すればよいと思うのだがね。

・矢鱈とはしゃぐ人

→うるさいよ。

・自己弁護してくる人

→自分のために一生懸命がんばってまちゅね。うるさいヨ。

・何を言ってるのかわからない人

→文法の勉強から出直してくんしゃいませ。

3

資格が欲しいです。実体のない自分には資格が必要です。働きたいとかじゃなくて、なにか目印が欲しいんです。資格が取れなかったら私は存在しなくなるでしょう。資格が持てなきゃ、なんのおもしろみもありません。

私は、なにかで突出した成績を残すこともなく、逸脱した欲求やこだわりを持つでもなく、積極的に人と関わることもなく、家の外にも出ず掃除と読書と食品の加熱をやってるだけのボンヤリとした物体に過ぎません。

いまの生きがいはそのための努力です。資格を取ることによって人生が良くなるとは期待していませんが。正直面倒です。何もする気になりません。そんな精神で資格を取られても困る、とその道に通った人間やその他大勢は言うでしょう。言うだけならやさしいですね。

癒し

将来の夢とかあったよね、大きくなったらなにになりたいかとか。いまはもうただらくになりたいだけなんです、、

ここで生活するにはおびただしい数のお約束を守る必要があって、それをすることには大いに意義があるもんだと思っています。だって、外の世界および自分の秩序を保つにはお約束に沿って選択をし続けるのが最善でしょう。支持します。

答えを出そうとする努力、答えをなぞろうとする気力がありません。なにもする気になれないのです。人は、人に限定して話しますが、自分にとって都合の悪いことから目をそむけますね、私もそうですが。なにかと事実を曲げたり嘘をついたりしているようでなんなら癇癪を起こしたり。たんなるノイズにしか感じられません。悲しいです。

美しい世界を望んでいるわけではありません。ただ、ちょと煩わしいところに来てしまった気がする。ね、そうですよね。あまりにも平和な環境に置かれ続け傲慢さだけが成長した結果です私。よくみてください。いやみないでください

 

 

アーカイブ

…2人。2人部屋に連れてくる。木箱が2つ。2人ともぼんやりしているうちに木箱に押し込む。安座ですっぽり収まる。目の部分だけくり抜いてある木の蓋を被せる。押入れに入れる。2人ともなにも言わない。身体が乾かないように生理食塩水をあらゆる穴…とは言っても届くところだけど…から与える。繰り返し…なんでこんなことやってるんだろ。この人たち誰だろう。

…数日忘れてた。押入れの中は相変わらず静か。手前の箱を覗いたら目があった。蓋を外した。溶けかけてた。原型ギリギリ。でもなにこれ。すっごく怒ってた。びっくりした。出してあげようと思って持ち上げた。まるでスライム。ベッドに寝かせた。粘土みたいに形を整えてみた。すっごく怒ってる。それもそうだ。私ひょっとしておかしいんじゃないか。

もうひとつの箱。死んでた。つか骨だった。骨が入ってるだけ。ちょっと安心した。ベッドひとつしかないしこれから友達が遊びにくる。

あんぱんと缶コーヒー

久しぶりだね。もう三年も経つのか、最近どうしてる。

え、なんだって「生活」をしているのかい。やめなよ、そんな無意味で不健全なことは。しばらく会っていないうちに随分と頽廃的になったんだね。

ごめんよ言いすぎた、自分はなにをしているのかって。そうね、脈絡なくやってるよ。いまだって、どうしてここに居るのかよくわからないんだ。そもそもどうやってここまで来たのか、はっきりしない。記憶があちこちで断たれてしまうんだ。忘れないように自分のやったことを記録しておかなければならなくなった。食事を最後にやったのはいつかな、食べても飲んでも身体がそれを吸収している実感が湧かなくなってから全然。寝れてるかって、寝てるよ。それが夜だとは限らないけど。

労働はしているよ。へ、社会参加してる気分にはならなかった。むしろ隔絶された感じがしたよ。でも嫌いではない。そのときだけは主体を放棄して労働をやってれば許されるんだから。金はね、どう使ったらいいのかわからなくて。貯まってく一方だ。

都会の悪臭から逃れるために毎日紅茶を淹れ嗅ぐだけ嗅いで飲まずに捨ててたこととか、歯を抜く前日に銀座で焼死体みたいなタルトを食べたこととか、忘れたわけではないんだけど、いまは袋の中で熱い缶コーヒーに部分的に温められたあんぱんのことしか考えられないんだ。ごめんね。そうでもしてないと期外収縮のことが気になってしまってほんとうに、敏感だから それじゃ

エコハウス

昼の近い時間になっている。朝食、ひとりでハンバーガーを齧っていたらまるで遠い昔から齧り続けていたような気持ちになり、

これからも永遠にそれが続くのではという不安に襲われ慌てて手元のアイスティーを吸う。酸っぱくて舌が困惑していた。違和感が不安を助長させ店の狭い階段を降りフラフラと帰路に就くための電車に向かう。駅では何を勘違いしたか社会と個人の分別のつかない芸大生が口の中で蚯蚓を飼っているにもかかわらずマルボロを咥えており、

蚯蚓は燻され潰されグニャリと折り重なったかと思いきや干物のように固く黒くなった。

家では昨晩の木耳と豚肉を炒めたやつが淡い臭気を放ちながら待ち構えていて、ああ私はこれのために帰ってきたのかもしれないと勝手なこじつけをしたはいいが腹はいっぱいで、どんな食物をも受け付けないようだったが2-3時間くらい?はやく東京を離れたいなんて幻想を抱いていたところで自分が歯を固く食いしばっていることに気づき、

ああまたやってしまったと肩を落とす。無意識に生じる歯ぎしりは私の臼歯を鋭く尖らせてしまっている。

遠くからおかあさんの声が聞こえて、「もう酒は飲まないで、飲まないで」としきりに訴えている。私はじっとり臭くてベトベトした汗をかいて、

いったいそこにどんな科学が、と歯向かってはみるものの次第に不安になってきてひたすらにアルコール嗜癖をやめろ、関係嗜癖をやめろ、お前を救う者はどこにもいないのだから、手遅れになる前に、どうか、と誰にでもなく嘆くようになる。